リレーエッセイ/第8回

『操山』と『象さん』との関係について

髙原景介先生
(平成21年2月寄稿)

 2009年の2月2日、つまり今日、岡山操山吹奏楽部OB会ホームページへの訪問者の数が、10万を超えた。アクセスカウントと言う方が正しいのだろうか、いずれにしてもお目出度いことである。

 ところで、このOB会のトップページ最上段の左端に、象さんのイラストとSOZAN BRASSという文字が組み合わせになっているのは、OB会の皆さんなら誰でも見て知って いるだろう。しかし、「操山ブラス」と「象さん」とがどんなに深い関係にあるのかについては、もしかしたらよく知らない人が多いのではないだろうか、と、ふと思いついた。この欄、つまりリレーエッセイに何か書かないかと吉見君に言われて、さて何を書いたものかと考えていたところだったのである。

 端的に言うと、これが判る為には、皆さんに、ほんのチョッピリだけドイツ語の勉強をして貰わなくてはならないのである。ドイツ語なんてまっぴらご免だから、もう先を読むのは止めようと思う人もいるかも知れない。「でもまあ、そう言わずに」というのが執筆者の正直な気持ちである。

 標準ドイツ語では、次に母音が来る語頭の<S>や母音に挟まれた<S>は濁音になる。だから、英語のYouにあたるドイツ語のSie、つまり<あなた>はズィーと発音される。また、アルファ ベットの最後の字<Z>はローマ字読みにすると濁音だが、ドイツ語では、後ろに来る母 音によって、ツァ、ツィ、ツ、ツェ、ツォ、と読まれる。ここまでが前置きである。

 さて、SOZAN BRASSだが、<SO>はゾ、<ZA>はツァだから、SOZANはゾーツァン と読むことになるのである。少し訛っている感じはするが、日本語でもおじさんのことをおっつぁんとも言うので、ぞーさんがぞーつぁんになるくらいのことはご勘弁願いたい。逆に、象さんをローマ字で綴るとZOSANだが、これをドイツ語読みすると、<ZO>は ツォ、<SA>はザだから、ツォーザンになる。

 ゾーツァンとツォーザン、つまり、『操山』と『象さん』とが、いつの間にか入れ替 わったことに気付いて貰えるだろうか。これでドイツ語の勉強は終わりである。

 今では操山の吹奏楽部も立派なステージ衣装まで持っているが、僕が赴任した頃はまだトレーナーもなかった。たしかその年(昭和58年)だったと思うのだが、トレーナーを作ろうではないかということになって、上に書いたドイツ語の発音の話を僕がしたのが、「操山と象さん」のお見合いだったと記憶している。

 心から賛成して貰えたのか、「先生が言うんだからしょうがねーや」ということだったのか、本当のことは僕は知らないが、ともかく『象さん』が『操山』のロゴマークになっ たのはそれがきっかけだったようだ。外部の人たちへのお披露目は、高吹連のリーダー研修会だった。真新しいトレーナーを着た操山からの参加生徒たちが、挨拶を終わって一斉に背中を向けた時、そこに可愛い象さんが描かれていたというわけである。

 この象さん、当時と今とではデザインは違うのだが、お寺の屋根の上に鹿の角が生えていて問題にされているような、厄介なもめごととは関係がなくて幸いである。

編集後記

今回、先生にご登場をお願いした私は、昭和61年度の入学ですが、操山が2年連続で中国大会出場という快挙を成し遂げた直後の年でした。 『操山で頑張れば、県立普通科でも中国大会に行ける!』 そんな想いで操山を選んだ部員も、当時は多かったのではないでしょうか。 ぞうさんロゴのお話、現役時代に先生から部室で聞かされた時のことが、本当に懐かしく思い出されます。

[吉見一成](../../e59089e8a68be4b880e68890)

  • 高原 景介 先生
    • 昭和58年度から62年度までの5年間、顧問として吹奏楽部を率いて下さいました。 その間、コンクール県大会は全て金賞、うち中国大会出場2回。
ホームページ『高原景介の断片自分史』
http://takahara.sozanbrass.com/